(三十二)都の門から退けられる無知
さて、私はこうしたことをすべて見つめていた。そのとき振り返ってみると、〈無知〉が川岸までやって来るのが見えた。けれども、彼はすぐに川を渡ってしまった。あの二人が出会った困難の半分も味わわずに済んだのである。ちょうどそのとき、そこには〈空しい望み〉という渡し守がいた。その渡し守が舟で彼を渡してやったからである。それから無知も、先の二人と同じように、門まで行こうとして山を登っていった。ただし、彼は一人きりだった。誰一人出迎えて、わずかでも励ましてくれる者はいなかった。
門の前まで来ると、無知は門の上に書かれた文字を見上げた。それから門をたたき始めた。すぐにでも入れてもらえるものと思っていたのである。けれども、門の上からのぞいていた人たちが彼に尋ねた。
「あなたはどこから来たのですか。何を望んでいるのですか」
無知は答えた。
「私は王とご一緒に飲み食いしました。また、王は私たちの大通りで教えてくださいました」
そこで人々は、王のところへ持っていってお見せするから、証書を出すようにと彼に求めた。無知は懐を探ったが、証書は見つからなかった。すると人々は言った。
「証書を持っていないのですか」
無知はひと言も答えなかった。そこで人々は王に知らせた。けれども、王は無知に会いに降りて来ようとはされなかった。そして、クリスチャンと〈希望〉を都へ案内したあの二人の輝く者に命じられた。外へ出て無知を捕らえ、手足を縛って連れ去るように、と。輝く者たちは無知をかかえ上げ、空中を運んでいった。そして、私が丘の中腹に見たあの戸のところまで来ると、彼をその中に入れた。そのとき私は、地獄への道が〈滅びの町〉からだけでなく、天の門からさえも通じていることを知った。こうして私は目が覚めた。見よ、それは夢であった。