ジョン・バニヤン『天路歴程』

(十五)伝道者

こうして二人は、道中で見てきたことを語り合いながら進んでいった。そのおかげで、道のりは楽になった。そうでなければ、きっと退屈な道だっただろう。今は荒野を通っていたからである。荒野をほとんど抜けかけたころ、〈忠実〉がふと後ろを振り返った。すると、誰かが後からついて来るのが見えた。見覚えのある人だった。忠実は兄弟に言った。

「おや、向こうから来るのは誰でしょう」

クリスチャンはそちらを見て言った。

「私の親しい友、伝道者さんです」

忠実も言った。

「ええ、私の親しい友でもあります。門への道に私を送り出してくださったのは、あの方なのですから」

やがて伝道者は二人に追いつき、こうあいさつした。

伝道者「愛する人たちよ、あなたがたに平安があるように。あなたがたを助ける者にも平安があるように」

クリスチャン「ようこそ、ようこそ、伝道者さん。あなたのお顔を見ると、以前あなたが私にしてくださった親切を思い出します。私の永遠の幸いのために、たゆまず労してくださったことも思い出します」

忠実「本当によく来てくださいました。ああ、慕わしい伝道者さん。あなたがご一緒してくださることは、私たちあわれな巡礼者にとって、どれほどうれしいことでしょう!」

伝道者「友よ、この前別れてから、どうしていましたか。どんなことに出会い、どのようにふるまってきましたか」

そこでクリスチャンと忠実は、道中で起こったことをすべて伝道者に話した。どのようにして、どれほど苦労してここまでたどり着いたかも話した。

伝道者「本当にうれしく思います。あなたがたが試練に出会ったことがうれしいのではありません。あなたがたが勝利を収めたことがうれしいのです。多くの弱さがあったにもかかわらず、今日この日まで道を歩み続けてきたことがうれしいのです」

「本当に、このことをうれしく思います。私自身のためにも、あなたがたのためにもです。私がまき、あなたがたが刈り取ったのです。そして、『まく者も刈る者も、共々に喜ぶ』日が来ます(ヨハネ四・三六)。ただし、あなたがたが耐え抜くならばです。『たゆまないでいると、時が来れば刈り取るようになる』からです(ガラテヤ六・九)。冠があなたがたの前にあります。それは朽ちない冠です。『賞を得るように走りなさい』(第一コリント九・二四〜二七)。この冠を目指して出発し、遠くまで来たのに、横から来た者に冠を奪われてしまう人もいます。『だから、あなたがたの冠がだれにも奪われないように、自分の持っているものを堅く守っていなさい』(黙示録三・一一)。あなたがたはまだ、悪魔の鉄砲の弾が届かないところまでは来ていません。『罪と取り組んで戦う時、まだ血を流すほどの抵抗をしたことがない』のです。いつも御国を目の前に置きなさい。目に見えないものを堅く信じなさい。この世にあるものは、何ひとつ心に入り込ませてはなりません。何よりも、自分の心と、そこにある欲によく気をつけなさい。心は『よろずの物よりも偽るもので、はなはだしく悪に染まっている』からです。顔を火打石のようにしなさい。天と地のいっさいの権威が、あなたがたの味方なのです」

クリスチャンは伝道者の勧めに感謝した。そして、残りの道のりの助けになるように、もっと話してほしいと頼んだ。伝道者が預言者であることを、二人はよく知っていたからである。これから身に起こるかもしれないことも、それにどう立ち向かい、打ち勝てばよいかも、伝道者なら教えてくれるはずだった。忠実もこの願いに加わった。そこで伝道者は、次のように話し始めた。

伝道者「わが子らよ、あなたがたは福音の真理のことばの中で聞いています。『多くの苦難を経て天の御国に入らなければならない』と。また、『至るところの町々で、投獄と患難とが、あなたがたを待ちうけている』とも聞いています。ですから、巡礼の旅を長く続けるうちに、何らかの形でこうしたことに出会わずにすむと思ってはなりません。あなたがたはすでに、これらの証しが真実であることを、いくらか身をもって知りました。そして、これからすぐに、もっと多くのことが起こります。ご覧のとおり、あなたがたはもうすぐこの荒野を抜けます。そうすれば、やがて行く手に町が見えてきて、まもなくその町に入るでしょう。その町で、あなたがたは敵にひどく取り囲まれます。彼らは何としてもあなたがたを殺そうとするでしょう。あなたがたのうちどちらか、あるいは二人ともが、自分の持っている証しを血で封印することになるのは確かです。けれども、『死に至るまで忠実であれ。そうすれば、王はいのちの冠を与えてくださる』のです。そこで死ぬ者は、非業の死を遂げ、おそらく苦しみも大きいでしょう。それでも、その人は連れよりも恵まれています。連れより先に天の都に着くからだけではありません。もう一人が残りの旅で出会う多くの災いを免れるからです。その町に着いて、ここで私が話したことが実現するのを見たら、友である私を思い出してください。そして、男らしくふるまいなさい。『善をおこない、そして、真実であられる創造者に、自分のたましいをゆだねるがよい』」