クレメンスの第一の手紙 / ローマのクレメンス

31-40 章

31:1 ですから、神の祝福に目を留め、祝福への道が何であるかを知ろうではありませんか。はじめから起きたことを記した記録を学びましょう。
31:2 私たちの父アブラハムは、なぜ祝福されたのでしょうか。信仰を通して義と真実を行ったからではないでしょうか。
31:3 イサクは、信頼し、未来を知っていたので、自ら進んでいけにえになりました。
31:4 謙遜なヤコブは、兄弟たちに追われて故郷を出て、ラバンのところに行って仕えました。それで、イスラエルの十二部族がヤコブに与えられたのです。

32:1 彼ら一人ひとりについて真摯に考えるなら、神に与えられる賜物の素晴らしさが理解できるはずです。
32:2 なぜなら、神の祭壇に仕えるすべての祭司とレビ人は、ヤコブから出たからです。主イエス・キリストも肉によればヤコブから出たのです。王も支配者も統治者も、ユダの末裔です。そうです。ヤコブの他の部族が受けた栄誉も決して小さくありませんでした。「あなたの子孫は天の星のようになる」と言われた神の約束のとおりです。
32:3 ですから、彼らはみな栄誉と賞賛を受けましたが、自分自身や自分の働きや自分の行った義の好意のゆえではなく、神のみこころのゆえです。
32:4 私たちもまた、キリスト・イエスにある神のみこころによって召されたのですから、自分自身や自分の知恵や理解力や敬虔さや聖い心で行った働きのゆえではなく、信仰のゆえに義とされるのです。全能の神は、はじめの時以来どんな人でも義となさるのは信仰のゆえでした。神に栄光がとこしえにありますように。アーメン。

33:1 では、兄弟たちよ、私たちは何をしなければならないのでしょうか。善行を差し控えること、愛を放棄することを黙って見過ごさなければならないのでしょうか。このことが私たちに振りかかることを主が決してゆるしませんように。そうではなく、私たちはどんな良い働きをすることにおいても、早急に、熱意をもって行おうではありませんか。
33:2 宇宙の造り主また支配者である方ご自身が、ご自分の働きにおいて喜ばれたのです。
33:3 神が天を造ったのは、ご自分の非常に大きな御力により、またそれに秩序をもたらしたのは、ご自分の計り知れない知恵によります。神は大地を水から分離して境を設け、ご自分のみこころによって確かな基の上にかたく立てました。地の上を歩く生き物は、ご自分の命令によって存在するようにと神が命じました。海とその中に生きるものを造る前に、その御力によって海を囲んでおかれました。
33:4 そのすべてにまさって、ご自分の知恵による最もすばらしく偉大なみわざとして、神はその聖なる欠けのない御手によって、人をご自分のかたちに似せて造られました。
33:5 こう仰せられているとおりです。「われわれのかたちにかたどって、われわれに似せて人を造ろう。そして神は人を造った。神は人を男と女とに造られた。」
33:6 これらすべてを終えて、神は彼らを良しとされ、彼らを祝福して言われました。「増え広がりなさい。」
33:7 すでに見たとおり、すべての義人は良い行いで飾られています。そうです。主ご自身がご自分を世界で飾られ、それを喜ばれたのです。
33:8 私たちはこの教訓を持っていることを知って、心を尽くして神のみこころを確証しようではありませんか。力を尽くして義の行いをしようではありませんか。

34:1 働き者は大胆にその働きによるパンを受け取るが、軽率な怠け者は雇い主の顔をまともに見ることもできません。
34:2 したがって、私たちは良い行いをすることに熱意を持つことが必要です。神からすべてのものが出ているのですから。
34:3 神が私たちに前もって仰せられています。「主よ。見よ、主の報酬は御顔の前にあり、おのおのの行いに応じて報いを与えられる。」
34:4 ですから、まったき心で神に信頼し、どんな良い働きに対しても、怠けたりないがしろにしたりしないようにと、神は私たちに強く勧めておられます。
34:5 私たちの誇りも信頼も神に置こうではありませんか。神のみこころに従おうではありませんか。神の近くで仕えてみこころを行っている大勢の神の御使いに見習おうではありませんか。
34:6 聖書にこうあります。「神には万の万倍が付き従い、千の千倍が仕えていた。彼らが大声で叫んだ。聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の主。すべての被造物は神の栄光で満たされている。」
34:7 そうです。それだから、心を尽くして調和のうちに集まり、私たちが神の偉大な栄光ある約束にあずかる者とされますようにと、口をそろえて熱心に神に叫びなさい。
34:8 神が仰せられます。「目が見たことがなく、耳が聞いたことがなく、人の心に思い浮かんだことのないもの。神を熱心に待ち望む者のために用意されたものはそのように素晴らしい。」

35:1 親愛なる方々、神の賜物はどれほど祝福され、驚くべきものでしょうか!
35:2 不死にあるいのち、義にある輝き、勇気にある真理、信頼にある信仰、聖さにある自制! これらすべては私たちの理解の下にあるのです。
35:3 では、神を辛抱強く待ち望む者のために用意されているものは何だと思いますか。時を超えてすべての人の創造主であり父である方、まったき聖なる方ご自身が彼らの数と美をご存知です。
35:4 ですから、神を辛抱強く待つ者の数に私たちが入れられるように、走り抜こうではありませんか。最後には、神が約束なさった賜物に参与する者となれるのですから。
35:5 しかし、親愛なる方々、これはどうでしょうか。私たちの心は神にしっかりと向かってゆるがないでいるでしょうか。私たちは神に喜ばれ受け入れられるものを探し求めているでしょうか。神の欠けなきみこころにふさわしいことをなし、真理の道に従い、不義と不正、むさぼり、あらそい、悪意とうそ、内緒話と陰口、神への憎悪、自慢と傲慢、虚栄と冷淡、そういったものすべてを自分の中から捨て去っているでしょうか。
35:6 これらのことを行う者は神に憎まれます。彼らはそれを行うばかりか、それを行うことに同意しているのです。
35:7 聖書が言うとおりです。「だが、罪人に対して神は仰せられる。あなたはどうしてわたしの戒めを告げ知らせ、わたしの契約をくちびるにのせるのか。
35:8 だが、あなたは戒めを憎み、わたしのことばを自分の後ろに投げ捨てた。あなたが盗人を見かけるとそれと仲良くなり、姦淫を行う者に取り分を与えた。あなたの口は汚れを増し、舌には嘘を編みこんだ。あなたは座って兄弟に敵対して語り、自分の母の子たちには障害物を置いた。
35:9 これらのことをあなたは行ったが、わたしは黙っていた。不義な者よ、わたしがあなたに好意を向けるに違いないとおまえは思った。
35:10 わたしはおまえの罪を宣告し、顔と顔を向き合っておまえに対する。」
35:11 いま、あなたがたはこれらを理解しなさい。神を忘れたあなたがたよ。いつでも神があなたを獅子として捕らえるかもしれません。誰も逃れられません。
35:12 「賛美のいけにえがわたしに栄光を返す。神の救いに至る道がある。わたしは彼にそれを示そう。」

36:1 親愛なる方々、私たちの救いを見出した道がこれです。私たちの捧げものの大祭司、私たちの弱さの守り主また助け主なるイエス・キリストです。
36:2 キリストを通して、天の高みをたゆまず見上げようではありませんか。キリストを通して、私たちは鏡を見るようにして彼の傷なきすばらしい御顔を拝見するのです。キリストを通して、私たちの心の目は開かれます。キリストを通して、私たちの愚かで暗い心が光になります。キリストを通して、主は私たちが不死の知識を味わうようにされたのです。主は神の尊厳の輝きであって、御使いよりもはるかにまさっています。御使いよりもさらにすばらしい御名を受け継いだからです。
36:3 こう書かれているからです。「神は御使いを霊とし、しもべを燃える火とされる。
36:4 しかし、御子について主はこう言われる。あなたはわたしの子、わたしは今日あなたを生んだ。わたしに求めよ。そうすればあなたの相続分として異邦人を与え、あなたの所有として地の果てを与えよう。」
36:5 また、キリストについてこう言われています。「わたしの右に座りなさい。あなたの敵があなたの足の下に置かれるまで。」
36:6 では、敵とは誰のことでしょうか。悪しき者、神のみこころに反抗する者です。

37:1 ですから、兄弟たちよ、熱心を尽くして神の誤りなき戒めに入隊しようではありませんか。
37:2 支配者の下に入隊した兵士たちを見なさい。どれほど忠実に、どれほど自主的に、どれほど従順に、与えられた命令をまっとうしているか。
37:3 すべての者が長官ではなく、すべての者が千人隊長、百人隊長、五十人隊長などではありません。けれども、一人ひとりが自分の等級において王と支配者から与えられた命令をまっとうします。
37:4 小なしで大はありえず、大なしで小はありえません。すべてのものに組み合わせがあり、その中に益があります。
37:5 私たちのからだを例にとりましょう。足のない頭は無意味です。同じように頭のない足も無意味です。からだのどんな小さな部分も必要で、からだ全体の役に立っています。からだ全体が救われるために、各部位が服従して協力し合い、一つになっています。

38:1 だから、私たちも、からだ全体がキリスト・イエスにおいて救われるようにしましょう。一人ひとりが隣人に対して、その人もまた特別な恵みにあずかって任命されているのだと思って仕えなさい。
38:2 強い者は弱い者を無視してはなりません。弱い者は強い者を敬いなさい。金持ちの奉仕者は貧しい者を世話しなさい。貧しい者は神に感謝しなさい。必要なものを与えてくれる人を神が遣わしてくださったからです。賢い者はその知恵をことばではなく良い働きにおいて発揮しなさい。へりくだった者は証を自分で負うのではなく、隣人が証を自分に負わせるようにしなさい。肉において純潔でいられる者は、そうしなさい。しかし、自慢するのではなく、自制心を与えてくださった方は自分ではないことを知りなさい。
38:3 兄弟たち、私たちは何から造られているのか考えましょう。私たちは何者で、どんなふうに存在しているのか。いつ世に生まれ出たのか。どんな墓、どんな闇から、私たちを形造り創造した方が、世に私たちを送り出したか。私たちが生まれるずっと以前に、神は前もって恵みを用意してくださったのです。
38:4 ですから、すべてこれらのものは神からいただいたのだと知って、すべてのことにおいて神に感謝すべきです。神に栄光がとこしえにありますように。アーメン。

39:1 無感覚で愚かで蒙昧で無知な者は、私たちをあざけり笑います。彼ら自身が自分の想像の中で高くあげられることを願っているからです。
39:2 死すべき者がどんな力を持っているのでしょうか。大地の子がどれだけ強いのでしょうか。
39:3 こう書かれています。「私の目の前にはどんな形もない。ただ息と声が聞こえるだけだ。」
39:4 では、どうでしょうか。死すべき者が主の目にきよくありうるでしょうか。人が責められることのない行いをしうるでしょうか。神はご自分のしもべを信頼しておられず、御使いたちに邪悪が認められることを知っておられます。
39:5 いや、天でさえも主の目にきよくありません。土の家に住んでいるあなたがたよ、同じ土で私たち自身も造られています。神は一匹の虫のように彼らを打ちたたき、朝から晩になると、それはもうありません。彼らは自分を助けることができないので、滅びます。
39:6 神が息を吹きかけると、彼らは死にます。知恵がないからです。
39:7 だが、あるいはあなたに従う者がいるのではないかと、聖なる御使いのひとりを見るのではないかと、あなたはお呼びになります。怒りは愚かな者を殺し、嫉妬は堕落した者を殺すからです。
39:8 私は愚か者が根を捨てるのを見たが、すぐに彼らの住まいは食われました。
39:9 彼らの子らは安泰でありませんように。彼らが下位の者の門であざけられますように。彼らを救う者はいません。義人は用意されたものを食べます。しかし、彼らは悪から救われません。

40:1 これらのことは前もって示され、私たちは神の知識の深みを探ってきたのですから、あらゆることを秩序をもって行うべきです。定められた時期に行いなさいと主が私たちに命じたことを。
40:2 さあ、捧げものと奉仕に関して、神は注意深く行うように命じられました。軽率に行ったり無秩序に行ったりするのではなく、定められた回数、定められた時期に行うようにと。
40:3 どこで、また誰によって実行させるのかを、神ご自身がその最高のみこころによって定めておかれました。神の良い喜びに従って敬虔に行われるあらゆることは、神のみこころに受け入れられるものです。
40:4 ですから、定められた時期に捧げものをする者は受け入れられ、祝福されます。神の制定されたことに従う限り、彼らは誤ることがないからです。
40:5 大祭司には大祭司の奉仕が与えられています。祭司には祭司の職務が任ぜられました。レビ人にはレビ人の奉仕が定められました。平信徒には平信徒の義務があります。