クレメンスの第一の手紙 / ローマのクレメンス

21-30 章

21:1 兄弟たち、神の豊かな恵みが、裁きに変わってしまわないように気をつけなさい。私たちが神の目に価値ある歩みをしないなら、私たちはみな裁きを受けるのです。善を行い、神の目に喜ばれることを調和のうちに行いなさい。
21:2 神がある箇所で仰せられているからです。「主の御霊はともしびであり、人の腹の隠れた内奥までも探られる。」
21:3 神がどれほど近くにおられるかを理解しようではありませんか。私たちの考えもはかりごとも神の目を逃れられません。
21:4 ですから、神のみこころを放棄する者にならないようにしなさい。それが正しいことです。
21:5 神に憤るよりも、自分で自分を持ち上げ、傲岸不遜に自慢する愚かで無感覚な者たちに憤ろうではありませんか。
21:6 私たちのために血を流された、主イエス[・キリスト]を恐れようではありませんか。私たちの支配者を尊ぼうではありませんか。私たちの年長者を敬おうではありませんか。神の恐れをもって私たちの若者を戒めようではありませんか。私たちの女性を善に導こうではありませんか。
21:7 すなわち、女性たちが純粋な美しい性質を示すように。優しい誠実な愛を証明するように。沈黙によって舌に節度を持つように。党派心からでなく聖さから、主を恐れるすべての人に分けへだてなく愛を示すように。また、私たちの子供たちをキリストにある命令にあずかる者とならせなさい。
21:8 子供たちが、心のへりくだりがいかにして神と共に勝利を得るのかを学ぶように。純潔な愛が神と共にあってどれだけ力強いかを学ぶように。神への恐れがいかに素晴らしく、偉大であるかを学ぶように。神への恐れは、聖さをもって純粋な心で、神を恐れつつ歩むすべての者を救うのです。
21:9 神は、人の心と願いを探り出される方です。神の息が私たちの中にあり、神はいつでもそれを取り上げることができます。

22:1 さて、これらすべてのことは、キリストにある信仰が確証しています。なぜなら、キリストご自身が、聖霊を通じて、このように招いておられるからです。「来なさい、私の子供たちよ。わたしに聞きなさい。主を恐れることを教えてあげよう。
22:2 いのちを望み、幸いな日々をみようと願う者は誰か。
22:3 あなたの舌を悪から遠ざけなさい。あなたのくちびるが狡猾を語らないようにしなさい。
22:4 悪を避け、善を行いなさい。
22:5 平和を探し、追い求めなさい。
22:6 主の目は義人の上にあり、主の耳は彼らの祈りに傾けられる。だが、主の御顔は悪を行う者の上にあり、彼らの記憶を地から消される。
22:7 義人の叫びを主は聞かれた。主は彼をすべての悩みから救われた。」義人に悩みは多いものですが、主がすべての悩みから救われます。
22:8 また、罪人に痛みは多いものですが、主に希望を置く者には恵みが取り囲みます。

23:1 御父は、すべてのものにいつくしみ豊かであり、いつも良いことをしてくださり、神を恐れる者をあわれんでくださり、一つ心で神に近づく者には優しく愛おしんで恵みを授けてくださいます。
23:2 ですから、二心にならないようにしようではありませんか。私たちの魂が、一方で神のすばらしい栄光の賜物を尊びつつも、他方で偶像の体液にまみれるようであってはいけません。
23:3 次のみことばが私たちに当てはまらないようにしなさい。「汚れた者は二心だ。魂で疑いを持って、こう言う。これらのことを私たちが聞いたし、父たちの時代にも聞いた。だが、見よ。我々は年老いたが、この一つも我々の身にふりかかってはいない、と。」
23:4 あなたがた愚か者よ。自分自身を木と比べてみなさい。ぶどうの木を見なさい。はじめに葉を落とし、次に若芽、それから大きな葉、それから花、そのあとに酸っぱい実、それからよく熟したぶどうを落とすのです。あっという間にぶどうの木の実が熟していくのがわかるでしょう。
23:5 本当に、神のみこころは敏速かつ前ぶれなく実現します。聖書もそれを証言しています。「主はすみやかに来られ、遅れることはない。」主は前ぶれなく神殿に来られます。あなたが待ち望んでいる聖なる方が来られるのです。

24:1 親愛なる方々、これから起こる復活について、主がいかに繰り返し私たちに示しておられるかを知ろうではありませんか。神は主イエス・キリストを死者の中からよみがえらせたときに、復活の初穂とされました。
24:2 親愛なる方々、定められた時に起こる復活に目を留めようではありませんか。
24:3 昼と夜は、私たちに復活を示しています。夜が眠りに落ちると、昼が起きます。昼が去ると、夜が来ます。
24:4 種蒔きがどのように行われ、実りとなるのかを考えましょう。
24:5 蒔く者が行って、種を地に蒔きます。乾いた地に落ちた種は衰弱します。それから、主の経綸の御力が、衰弱した種を生き返らせ、芽を出して成長し、実を結ぶのです。

25:1 東の方、あるアラビアの地域に存在する驚くべきしるしについて考えましょう。
25:2 フェニックスという名前の鳥がいます。同じ種は他におらず、一羽しかいないこの鳥は、寿命が五百年あります。その鳥は寿命を迎えたとき、乳香や没薬や他の香料を入れた棺を自分で作り、時が来るとみずからその中に入って、死にます。
25:3 ところが、肉体が腐ると、ある虫が生まれ、死体から出た水気で養われ、翼が生えてきます。そして、虫が大きくなると、親の骨だけが残っている棺から出立し、その翼を使ってアラビアの国からエジプトまで旅し、太陽の町と呼ばれる場所に着きます。
25:4 昼間にすべての人の目の前で、太陽の祭壇に向かって飛び、その虫は翼をそこに置きます。それが終わると、戻っていきます。
25:5 それで、神官たちが年代の記録を調査すると、五百年間がまっとうされる時が来たことが判明します。

26:1 すばらしく驚くべきことだと思いませんか。宇宙の造り主が、聖さをもって神に仕えた良い信仰の保証の持ち主を復活させてくださるという厳粛な約束を、一羽の鳥によって私たちに示してくださっているのではないでしょうか。
26:2 ある箇所で主は仰せられています。「あなたは私を立ち上がらせ、私はあなたをほめたたえます。また、私は休息所に行って眠りましたが、目覚めました。あなたが私と共におられるからです。」
26:3 また、ヨブが言っています。「あなたはこれらすべてに耐えたこの私の肉を生き返らせてくださいます。」

27:1 ですから、この希望をもって、私たちの魂を神にかたく結びつけようではありませんか。神は約束において忠実な方、裁きにおいて公正な方なのですから。
27:2 嘘をつかないようにと命じられた神が、ご自分で嘘をつかれるはずがありません。神は、嘘をつくこと以外なら何でも不可能はありません。
27:3 ですから、神にある私たちの信仰を私たちのうちに燃え立たせ、あらゆるものが神の近くにあることを理解しましょう。
27:4 威厳ある一言のことばによって、神は宇宙を形造りました。また一言のことばによって、宇宙を滅ぼすことがおできになります。
27:5 誰が神に向かって「あなたは何をしたのか」と言えるでしょうか。誰が神の強大な御力に抵抗できるでしょうか。神がお考えになると、お考えになったとおりに、すべてのことをなさいます。神が定めた事柄は何一つ過ぎ去りません。
27:6 すべてのものは神の目にあり、神の意図から免れるものはありません。
27:7 「天は神の栄光を宣言し、空は神のみわざを布告する。日は日に話を伝え、夜は夜に知識を示す。言葉も話もなく、声も聞こえないが。」

28:1 したがって、すべてのことは見られ、聞かれているのですから、神を恐れて悪い働きによる忌まわしい情欲を捨てようではありませんか。神の恵みによって、来たる裁きから守られるために。
28:2 というのも、私たちのうち誰か一人でも、神の力強い御手からどこかに逃れることができるでしょうか。また、神の与えてくださるものから逃れる者が、いったい何を受け取れるでしょうか。
28:3 聖なる書物がある箇所でこう言っています。「あなたの御顔を逃れて、私はどこに行けましょうか。どこに隠れることができましょうか。天に昇れば、そこにあなたはおられます。地の最も遠い場所に逃れても、そこにあなたの右の手があります。深いところに寝床を作っても、そこにあなたの御霊があります。」
28:4 宇宙を抱く方から、人はどこに隠れ、どこに逃げることができるのでしょうか。

29:1 ですから、魂の聖さをもって神に近づきましょう。きよく汚れなき手を神にあげて、優しくあわれみ深い私たちの御父への愛をもって、近づきましょう。御父は私たちをご自分のために選ばれた分け前としてくださったのです。
29:2 こう書かれているからです。「最も高みにおられる方が国々を分けたとき、神がアダムの子らを追い散らしたとき、国々の境を神の御使いの数にしたがってお直しになった。神の民ヤコブは主の取り分となった。イスラエルは神の相続分の計りとなった。」
29:3 他の箇所でこう言われています。「見よ、主はご自分のために国々のただ中から一つの国を取られる。人が脱穀場から初穂を取るように。聖の聖なる方がその国から来られる。」

30:1 私たちは聖なる神の特別な取り分だということを知って、聖さにふさわしいすべての行いをし、悪口、忌まわしい淫行、酩酊、騒乱、憎むべき情欲、忌まわしい姦通、憎むべき自慢を捨てようではありませんか。
30:2 神は誇る者をないがしろにされるが、へりくだる者に恵みを与える、とご自分で仰せられているからです。
30:3 ですから、神から恵みを与えられている人たちの後を追おうではありませんか。調和を身に着て、謙遜で柔和であり、人を攻撃するような悪口を慎み、言葉によってではなく行いによって義とされようではありませんか。
30:4 多く話す者は多く聞くこともしなければならない、と神が仰せられているからです。おしゃべりな人が義とされると思いますか。
30:5 短命な女性の子孫は祝福されています。言葉が多すぎてはいけません。
30:6 私たちの賛美は神と共にあるべきで、私たちのものであってはなりません。自分自身を賛美する者を神は憎まれます。
30:7 良い行いをしたという証言が他の人から出るようにしなさい。義とされた私たちの父祖たちも他の人から証されました。
30:8 自慢、傲慢、大胆不敵さは、神に責められる者のためです。しかし、自制、謙遜、柔和は神に祝福される者と共にあります。