11-20 章
11:1 アブラハムの親切と敬虔によって、ロトはソドムから救われました。国中が火と硫黄の裁きを受けた時にです。神に希望を置く者を神は見捨てないが、そこから外れる者は罰と苦痛を受けるということを、主はあらかじめ示しておかれました。
11:2 というのも、ロトの妻がロトについて行ったとき、自発的ではなく未練を残したままであったので、彼女はここにしるしとして定められました。すなわち、彼女はその日、塩の柱になりました。それは、二心の者と神の力を疑う者が、すべての世代のために裁きとしるしに定められているということを、すべての人が知るためでした。
12:1 娼婦ラハブは、その信仰と親切のゆえに救われました。
12:2 というのも、ヌンの子ヨシュアがエリコに偵察を送ったとき、エリコの王は偵察が来たことに気づき、彼らを捕らえて殺すために人を送ったのです。
12:3 そこで、親切なラハブは彼らをかくまい、上の部屋で亜麻の茎の下に隠しました。
12:4 王からの使いが近くまで来て、言いました。「我々の地に偵察が来て、お前の家に入った。彼らを差し出せ。王の命令だ。」そこで、ラハブは答えました。「確かにあなたが探している人たちが、ここに来ました。でも、彼らはすぐに出て行って、いま逃げているところです。」彼女は反対方向を指さしました。
12:5 そして、ラハブは偵察の者たちに言いました。「あなたたちの主なる神が、この町をあなたたち手渡すことが、私には本当にわかります。ここの住民たちにあなたたちへの恐れとおおのきが臨んでいるからです。ですから、あなたたちがこの地を征服するとき、私と父の家をお救いください。」
12:6 彼らはラハブに言いました。「あなたが語ったとおりになるように。だから、私たちが来るのを知ったらいつでも、家族を屋根の下に集めておきなさい。そうすれば、あなたがたは救われる。その家の外にいるものは誰であっても滅ぼされる。」
12:7 さらに彼らはラハブに、家から赤いひもをつり下げておくように、という証拠を与えました。それによって、主の血潮を通じて、神を信じ神に希望を置くすべての者をあがなうということが前もって示されたのです。
12:8 あなたがた、親愛なる方々よ。信仰だけでなく預言も、この女性に与えられたのです。
13:1 したがって、兄弟たちよ、あらゆる高ぶりとうぬぼれと愚行と怒りを捨てて、へりくだろうではありませんか。書かれているとおりに行おうではありませんか。聖霊が仰せられるとおりです。知者はおのれの知恵を誇ってはならない。強者はおのれの力を誇ってはならない。富める者はおのれの豊かさで誇ってはならない。誇る者は主を誇りなさい。神を探し求め、主イエス・キリストが語られたすべてのことばを覚えて、裁きと義を行いましょう。主は自制と忍耐を教えてくださいました。
13:2 主は語られました。あわれみ深くありなさい。そうすれば、あなたがあわれみを受ける。ゆるしなさい。そうすれば、あなたがゆるされる。あなたがしたように、あなたもされるのだ。あなたが与えるように、あなたにも与えられる。あなたが裁くとおりに、あなたも裁かれる。あなたが親切を示すとき、あなたもそのとおりに親切にされる。あなたが計るはかりで、あなたも計られるのです。
13:3 この命令と教訓をもって、自分自身を確証し、主の神聖なみことばに従順になって、へりくだりの心をもって歩もうではありませんか。
13:4 聖なるみことばが仰せられているとおりです。優しく、静かで、わたしの託宣を恐れる者のほかに、わたしは誰を救い、顧みようか、と。
14:1 ですから、兄弟たち、高ぶりと反抗心をもって、自分こそが師であると自称する嫉妬深い者たちよりは、神にこそ従うべきである、という教訓は正しく相応しいものです。
14:2 もし、争いと騒乱を招く者の目的に、私たちが分別なく従い、正義から外れてしまうなら、みな等しく害を受けるどころではなく、大きな危難が降りかかるでしょう。
14:3 私たちを造られた神のあわれみと優しさをもって、お互いに善を行おうではありませんか。こう書かれているからです。
14:4 「善人は地に住み、無垢な者は地に留まるが、背く者は地から完全に滅ぼされる。」
14:5 また、神は仰せられます。「不敬虔な者が高くあげられ、レバノンの杉のように高くそびえるのをわたしは見た。そこでわたしは近寄って、彼が本当は高くそびえていないのを知った。彼の場所を探したが、見つからなかった。罪を知らずまっすぐでいなさい。平和な人のためには残されたものがあるからだ。」
15:1 ですから、平和を追い求めるふりをする者を追うのではなく、敬虔をもって平和を行う者の後を追おうではありませんか。
15:2 主がある箇所でこう仰せられているからです。「この民はくちびるではわたしをほめるが、心はわたしから離れている。」
15:3 また、「彼らは口では祝福したが、心では呪った」ともあります。
15:4 さらに主は仰せられます。「彼らは口では神を愛するが、舌では神に嘘をついている。心は神に向かっておらず、神の契約にかたく立つこともしない。」
15:5 こういうわけで、義人に逆らって邪悪を話す偽りの舌を黙らせなさい。どうか主が、すべての偽りの舌と、高ぶりを語る舌と、それを語る者たちまでもを滅ぼしてくださいますように。私たちの舌によく気をつけようではありませんか。舌は私たち自身です。私たちの主は誰なのですか。
15:6 主が仰せられます。「困窮する者の悲惨のために、貧しい者の嘆きのために、わたしは今立ち上がる。わたしは彼を安全にかくまい、特別に扱う。」
16:1 なぜなら、キリストは心のへりくだった者と共におられ、高ぶって人の上に自分を置くような者とは共におられないからです。
16:2 神の尊厳ある笏、私たちの主イエス・キリストは、傲慢で誇り高ぶった威厳をもって来られたのではありません。確かにそのように来られることもできましたが、聖霊がキリストについて話されたとおりに、心のへりくだりをもって来られたのです。
16:3 神がこう仰せられているからです。「主よ、私たちの知らせを誰が信じたか。主の御腕が誰に伸ばされたか。私たちは彼を主の目の前で知らせた。彼は子供のようであり、かわいた地の根のようであった。彼には見ばえもなく、輝きもなかった。私たちは彼を見たが、彼には見ばえも魅力もなかった。むしろ、彼の外見は卑しく、人の形を損なっていた。彼は傷つけられた苦痛の人だった。弱さの耐え方を知っていた。人は彼の顔に振り向かなかった。彼はあざけられ、誰にも顧みられなかった。
16:4 彼は私たちの罪を負い、私たちのために痛みを引き受けた。だが、私たちは彼が自分のせいで痛みと傷と苦しみを受けているのだと思った。
16:5 彼は私たちの罪のために傷つけられ、私たちの背きのために苦しんだ。私たちの平和のために、彼は懲らしめられた。彼の打ち傷によって、私たちはいやされた。
16:6 私たちはみな羊のようにさまよい、人はみな自分の道で迷った。
16:7 だが、主は私たちの罪のために彼を明け渡された。彼は悩み抜き、口を開かなかった。羊のように彼はほふり場に引かれて行った。毛を刈る者の前にいる羊のように黙し、口を開かなかった。恥辱によって彼の裁きは取り去られた。
16:8 彼の世代のうち誰が言い表したか。彼のいのちは地から取り去られたのだ。
16:9 彼が来たのは死ぬためだった。私の民の罪のために。
16:10 私は彼の葬りのためによこしまな者を与え、彼の死のために金持ちを与えた。彼には罪はなく、口に謀略はなかったが。そして主が、傷から彼をきよめることを願われている。
16:11 あなたが罪のために捧げるなら、あなたの魂は生ける子孫を長く見られる。
16:12 また主は、彼の魂から苦悶を取り去り、光を見せてまったき理解へと練り上げ、多くの人に仕える良きしもべなる正しい方を義とすることを願われている。彼は人々の罪を負う。
16:13 それゆえ、彼は多くを相続し、強い者の戦利品を取り分けるのだ。自分の魂を死に明け渡し、罪人のひとりに数えられたからである。
16:14 彼は多くの人の罪を負い、人々の罪のために自分を明け渡した。」
16:15 また、主ご自身が仰せられています。「だが私は虫けらであって人でもない。人々の恥であり、民ののけ者だ。
16:16 私を見る者はみなあざわらう。人々はくちびるで語り、頭を振って言う。彼は主に希望を置いたのだ。自分で自分を解放し、救うがよい。自分に願っているからだ。」
16:17 あなたがた、親愛なる方々よ。私たちに与えられた教訓は何でしょうか。主がこのようにへりくだった心を持っておられるのなら、私たちはどうすべきでしょうか。主の恵みのくびきの下で、誰が主を出し抜いたのでしょうか。
17:1 ヤギや羊の皮をまとってキリストの到来を宣べ伝えた人たちに倣おうではありませんか。エリヤ、エリシャ、またエゼキエルのような預言者たち、他にもいますが、良い知らせを得た方々のことです。
17:2 アブラハムは格別な良い知らせを得て、神の友と呼ばれました。アブラハムはわき目もふらずに神の栄光に目を注ぎ、心のへりくだりをもって「しかし、私はちりです。灰です」と言いました。
17:3 さらに、ヨブについてはこう書かれています。「そして、ヨブは正しく、責められるべきところがなく、真実で神をほめたたえ、あらゆる悪を避ける人だった。」
17:4 けれども、ヨブは自分を責めて言いました。「どんな人でも、生涯どころか一日さえも堕落を避けることはできない。」
17:5 モーセは、神の全家において忠実な人と呼ばれました。モーセの働きを通じて、神はエジプトを裁き、エジプトに疫病と苦難が降りかかりました。けれども、モーセもまた、大きな栄光を受けていたにもかかわらず、自分を誇る言葉を言わず、それどころか柴のところで神の託宣が臨んだときに、「あなたが私を遣わすとは、私はいったい何者だというのでしょうか」と言ったのです。
17:6 「おやめください、私は口下手で話すのが遅いのです。」また、こう言いました。「でも、私は鍋から出る湯気です。」
18:1 では、良い知らせを得たダビデについては何を言わなければならないでしょうか。ダビデについて神は言われました。「わたしは心にかなう者を見出した。エッサイの子ダビデよ、永遠の恵みをもって、わたしは彼に油注いだ。」
18:2 しかし、ダビデも神にこう言いました。「私に恵みを与えてください。ああ、神よ、あなたの大きな恵みによって。あなたの大きなあわれみによって、私の咎を覆ってください。
18:3 私を咎から洗いきよめ、私の罪をきよめてください。私は咎を自覚し、私の罪は私の前にあります。ただあなたに向かって、私は罪を犯しました。あなたの目に悪を行いました。あなたがみことばによって義とされ、訴えによって征服してくださいますように。
18:4 見よ、咎のうちに私は身ごもられ、罪のうちに母は私を産みました。見よ、あなたは真理を愛しました。あなたは知恵によって、闇と隠れた事柄を私に示されました。
18:5 ヒソプの水を私にふりかけ、私をきよめてください。私を洗ってください。そうすれば、私は雪よりも白くなります。
18:6 あなたは私が喜びと楽しみをもって聞くようにしてくださいます。辱められた骨は喜ぶようになります。
18:7 御顔を私の罪から離し、私のすべての咎を覆ってください。
18:8 私のうちにきよい心を造ってください。ああ、神よ、私の内奥に正しい霊を新たに造ってください。あなたの御前から私を投げ捨てないでください。私から聖霊を取り上げないでください。
18:9 あなたの救いの喜びを私に戻し、雄々しい霊をもって私を強めてください。
18:10 私は罪人にあなたの道を教えましょう。敬虔な者はあなたに立ち返りましょう。
18:11 血の過ちから私を解放してください。ああ、神よ、私の救いの神よ。私の舌はあなたの義にあって喜びます。
18:12 主よ、あなたが私の口を開いてくださると、私のくちびるはあなたをほめたたえます。
18:13 あなたがいけにえを望まれるなら、私は捧げましょう。全焼のいけにえにあなたは満足されません。
18:14 神へのいけにえは、悔いくずおれた霊です。悔いくずおれてへりくだった心を神は蔑まれません。」
19:1 したがって、良い知らせを得たすばらしい人々がこんなにも多くいますが、彼らが示した謙遜と服従と従順によって、私たちも、私たちの前の世代も、また恐れと真実をもって神の託宣を受けた人たちも、ますます良くなっているのです。
19:2 ですから、私たちは多くのすばらしい、栄光ある行いに参与しているのですから、はじめから私たちのために取っておかれた平和の目的地へと、急いで立ち返ろうではありませんか。御父と世界の創造主にしっかりと目を注ぎ、平和と恵みの輝かしい至高の賜物から目を離さずにいようではありませんか。
19:3 いつも神のことを心に留め、神の辛抱強いみこころを魂の目で見ようではありませんか。神がすべての被造物に対して怒りを下さずにおられることに、注意を向けようではありませんか。
20:1 天は、神の命令によって動き、平和のうちに神に従っています。
20:2 昼と夜は、神の定めた行路を行き、お互いの進行を妨げません。
20:3 太陽と月と飛び回る星々は、神の命令のとおり、神の定めた軌道を外れることなく調和をもって巡っています。
20:4 大地は、神のみこころにかなって季節の実りをならせ、食物を生み出します。その食物は、人と獣と地のすべての生き物に豊かに行き渡ります。大地は、不和を起こさず、神の命じたことを曲げません。
20:5 さらに、陰府の計り知れない深さも、地下の言い表しがたい法則も、同じ命令によって支配されています。
20:6 広大な海の水は、神のみわざによって一箇所に集められ、その境界を守って、はみ出しません。神が命じられたとおりに行っています。
20:7 神がこう仰せられたからです。あなたはここまでは来てもよいが、ここから先は波が自ら崩れなさい、と。
20:8 大海を人は渡りきれませんが、世界は大海をも超えています。けれども、それらも主の同じ命令で保たれています。
20:9 春夏秋冬の季節は、平和のうちに次の季節に道を譲ります。
20:10 風は、適切な季節の自分の任期に、妨げなく自分の働きをまっとうします。湧き続ける泉は、楽しみと健康のために創造されましたが、自分の乳を与えて、人のいのちを支えてくれます。そうです、最も小さい生き物も、調和と平和のうちに共に来ます。
20:11 これらすべてのことは、宇宙の偉大な造り主であり支配者である方がお命じになったとおり、調和と平和のうちに存在し、すべてのものに対して善を行います。けれども、私たちに用意された安息は、それよりもはるかにまさっています。私たちは、主イエス・キリストを通じて神のあわれみ深い恵みのうちに避け所を得るのです。
20:12 主イエス・キリストに栄光と尊厳がとこしえにありますように。アーメン。