（八） 義

私たちのあがむべき主について、こう書かれています「あなたは義を愛し、不正を憎まれます。それゆえ、神よ。あなたの神は、あふれるばかりの喜びの油を、あなたとともに立つ者にまして、あなたに注ぎなさいました。」（ヘブル一・九）神の御子の御霊を住まわせている私たちが、御子と同じように義を愛し、不正を憎むようになることが、神の目的です。私たちがもはや罪に定められることがなく、天国が私たちにいつも開かれているような場所がキリスト・イエスの中にあることが私にはわかります。神が私たちに差し出されている神のいのちの領域があります。そこにおいて、果てしない未来への進歩があり、無限の力があり、計り知れない源があり、悪魔のあらゆる力に対しての勝利があります。私たちが神の栄光だけを求めて、この完全に聖であるいのちに行き着く望みに満たされているなら、私たちの真実の歩みを妨げるものは何もないと私は信じています。

ペテロは第二の手紙を次のようなことばで始めています。「イエス・キリストのしもべであり使徒であるシモン・ペテロから、私たちの神であり救い主であるイエス・キリストの義によって私たちと同じ尊い信仰を受けた方々へ。」私たちが私たちのよみがえりの主と一心同体とされているという祝福と光栄にあずかっていることを認識するのは、信仰を通してなのです。イエスさまは地上におられた時に私たちにこう言われました。「わたしが父におり、父がわたしにおられる。」「わたしのうちにおられる父が、ご自分のわざをしておられるのです。」（ヨハネ一四・一〇）そしてイエスさまは、ご自分の弟子たちのためだけでなく、彼らのことばによって主を信じる人々のためにも、父に祈られました。「それは、父よ、あなたがわたしにおられ、わたしがあなたにいるように、彼らがみな一つとなるためです。また、彼らもわたしたちにおるようになるためです。そのことによって、あなたがわたしを遣わされたことを、世が信じるためなのです。」（ヨハネ一七・二一）ああ、何という相続分が私たちのものとなっているのでしょう。御父と御子が持っておられるまさにその性質、その義、その力が私たちの中でありありと形造られる時に、その素晴らしさに驚嘆します。それが神の目的です。そして私たちが信仰によってその目的をしっかりとつかむなら、私たちのうちにおられる方がこの世のうちにいるあの者よりも力があるという事実を、絶えず味わい知ることになるのです。すべての聖句の目的は私たちを導いて、この素晴らしい祝福された信仰の背丈にまで成長させることです。そこにおいて、絶え間なく神のいのちと力が私たちを通して現されることを経験するようになります。

ペテロは、同じ尊い信仰を受けた人々に向けて、続けてこう書いています。「神と私たちの主イエスを知ることによって、恵みと平安が、あなたがたの上にますます豊かにされますように。」私たちは信仰の領域に生きている時に限り、この恵みをますます豊かにされるようになります。アブラハムは他の何よりも神を信じたという点で、神の友とされるところにまで達したのです。アブラハムは神を信じました。それで神は彼を義とみなしました。彼が義と認められた根拠は、彼は神を信じたこと以外には何もありません。このことは他の人にとっても真実でしょうか。その通りです。信仰によって救われる全世界のあらゆる人が、信仰の父アブラハムと共に祝福にあずかるのです。彼が神を信じたことで与えられた約束は、地上ですべての家族が神にあって祝福されるというものです。私たちが神を信じる時、私たちの信仰により与えられる祝福は絶えることを知りません。

ある人々は自分たちのために祈ってもらっても、彼らが期待していることが一晩で現れてこないので、諦めてしまいます。彼らは信じていると口では言いますが、実際には不信仰による動揺の中にいることが見て取れます。アブラハムは神を信じました。彼がサラにこう言うのが聞こえそうです。「サラよ。あなたの中のいのちは止まっている。私にも無い。けれども神が私たちに男の子を約束されたのだ。私は神を信じる。」そして、こういう信仰を天の父は喜ばれるのです。

ある日、私がイングランドのランカシャー州の町ビュアリで集会を持っていた時のことです。甲状腺腫瘍のいやしのために来ていた、ラムズボトムという町出身の若い女性がいました。彼女は集会に行く前に、こう言いました。「お母さん。私はこの甲状腺腫瘍をいやすために行ってきます。」集会が終わってから彼女は前に出て祈ってもらいました。翌朝彼女は起きると、自分がいやされた素晴らしい証しを話しました。それからこう言いました。「私がいやされた素晴らしい体験を母に話しに行けるのがとても嬉しいです。」彼女は家に帰って、彼女がどんなに素晴らしいいやしをいただいたかを証ししました。翌年、私たちがまた集会を開くと、彼女は再び来てくれました。自然の観点では、その甲状腺腫瘍は以前と大きさが変わっていないようでした。けれども、この若い女性は神を信じていました。彼女はすぐに自分から進み出て証しをしました。「私は去年ここで主に素晴らしいいやしをいただきました。私は皆さんに、去年が私の人生で最高の年だったことをお伝えしたいと思います。」彼女はその集会で大いに祝福されたようでした。そして家に帰って、以前よりも力強く、主が彼女をいやしてくださったことを証ししました。彼女は神を信じていました。三年目になって彼女はまた集会に参加しました。彼女を見たある人々は言いました。「腫瘍がなんと大きくなったんでしょう！」でも証しの時間になると、彼女は自分から進み出て証しをしました。「二年前、主が恵みをもって私を甲状腺腫からいやしてくださいました。ああ、私はこの上なく素晴らしいいやしをいただきました。神の力でいやされるのは最高のことです。」その日、ある人が彼女に忠告しました。「あなたに何か問題があるとみんな考えますよ。鏡を見てご覧なさい。腫瘍が去年よりも大きくなっているのが分かりますよ。」この良い女性はそのことについて主のもとへ行って言いました。「主よ。あなたは二年前に私をいやして下さった素晴らしい方です。あなたが私をいやされたことをすべての人々に示していただけますか。」彼女はその夜、神をなおも信じて平安のうちに眠りました。翌日彼女が起きてみると、腫瘍が跡形もなく消えていました。

神のことばはとこしえからとこしえまで絶えません。神のことばは損なわれません。神のことばは真実です。私たちがそれが真実だという事実により頼む時に、何と力強い結果を得ることができるでしょうか。信仰は鏡を見ません。信仰は起こりうることを見るための鏡を持っています。その鏡は完全な自由の律法という鏡です。「完全な律法、すなわち自由の律法を一心に見つめて離れない人は、すぐに忘れる聞き手にはならないで、事を実行する人になります。こういう人は、その行いによって祝福されます。」（ヤコブ一・二五）神の完全なこの律法を見つめる人にとって、すべての闇は除かれて、その人はキリストにある自らの完全さを見るようになります。信仰には闇がありません。闇は自然の中にだけあります。闇が存在するのは、自然の人が神の人の場所を占める時だけです。

神とイエス・キリストを知る知識によって、恵みが私たちに増し加わるだけでなく、平安もまた増し加わります。私たちの神と、神の遣わされたイエス・キリストを本当に知ることによって、ネブカデネザルの一万倍の炎の中にあっても、私たちには平安が増し加えられます。たとえ獅子の穴に投げ込まれても、私たちには平安が増し加えられ、獅子の穴のただ中で喜びを持って生きることができます。ダニエルが獅子の穴に投げ込まれた日の晩、ダニエルと王の違いは何だったのでしょうか。ダニエルは知っていました。しかし王は実験していました。翌朝、王が穴に近づいて呼びかけました。「生ける神のしもべダニエル。あなたがいつも仕えている神は、あなたを獅子から救うことができたか。」ダニエルは答えました。「私の神は御使いを送り、獅子の口をふさいでくださったので、獅子は私に何の害も加えませんでした。」ことはすでに成っていました。ダニエルが天に開いた窓に向かって祈った時に、もう成っていました。私たちのあらゆる勝利は、私たちが戦いに行く前にすでに勝ち取られています。祈りが私たちを、私たちの麗しい神に、私たちの豊かな神に、私たちの増し加えて下さる神につなげてくれるのです。ああ、私は神を愛しています！　神は素晴らしい方です！

ペテロの第二の手紙の、一章の最初の二節を読むと、この恵みと平安が増し加えられるのは、神を知ることによってだと気づきます。でも、最初に私たちが信仰を受けるのは神の義によるのだということも分かります。義が最初に来て、次に知ることが来るということに注意して下さい。逆ではありません。聖くされること無しに神からの啓示を期待しても、得られるのは混ぜ物だけです。聖さが、神のすべての宝物庫の扉を開けます。神は私たちにこの良い物に満ちた宝物庫を開ける前に、私たちが主と同じように義を愛し不正を憎むところにまで、最初に私たちを導かなくてはいけないのです。私たちが心の中に不法を見いだすなら、主は私たちを聞かれません。私たちが御子のうちにある聖と義のいのちに入ることができるのは、神の御子の尊い血によって私たちが義とされ、純粋な者とされ、聖とされる時だけなのです。私たちの中に私たちの主の義がありありと形造られるなら、私たちの信仰は主の中にとどまることができます。

私が聖霊のバプテスマを受けた後、主は私に啓示をもって祝福してくださいました。アダムとエバが不従順のために園から追い出されて、ケルビムと炎の剣がいのちの木への道をふさぐのを私は見ました。聖霊のバプテスマを受けた時に、私はこのいのちの木から私が食べ始めるのを見ました。炎の剣は輪を描いて回っていました。炎の剣は悪魔を侵入させないためにそこにありました。ああ、私たちが神から生まれる時に、何という特権が私たちのものになることでしょうか。何と驚くべき方法で、神は私たちに汚れた者が触れないように守られることでしょうか。私は神の中に、サタンが踏み込んでこない場所を見出しています。神のうちに隠されています。そして、私たちのいのちがキリストと共に神のうちに隠されるこの素晴らしい場所に、私たち皆が来て分かち合うようにと、神は私たちを招いておられます。いと高き方の隠れ場に住む者は全能者の陰に宿る（詩篇九一・一）、と書かれているその場所です。この恵みと祝福に満ちた場所を神はあなたのために用意しておられます。

ペテロは続けて書きます。「というのは、私たちをご自身の栄光と徳とによってお召しになった方を私たちが知ったことによって、主イエスの、神としての御力は、いのちと敬虔に関するすべてのことを私たちに与えるからです。」（第二ペテロ一・三）神は、この栄光と徳の領域に私たちを召されました。それによって、私たちは尊い素晴らしい約束に養われて、神のご性質にあずかる者となります。信仰は、私たちが生きているまさに今ここで、望んでいる事柄を保証するものです。神が私たちを神のご性質にあずかる者として下さると、まさに今ここで約束されています。私たちの存在の隅々にまで流れ込んでいるのは、主のいのちそのものなのです。それは、私たちのこのからだが生きたものとなるため、細胞の一つ一つが、血の一滴一滴が、私たちの骨と関節と骨髄が、この神のいのちを受け取るためなのです。主が神のいのちを流し込みたいと願われているのは、まさに私たちの自然のからだの中にであると私は信じています。キリスト・イエスにあるいのちの御霊の原理が、罪と死の原理から私たちを解放しました。私たちがこの神のいのち、この神の御子と同じ神のご性質をしっかりとつかむために、神は私たちの信仰を建て上げようとされています。それはまた、主イエス・キリストの来臨のときに、私たちの霊、たましい、からだが全く聖なるものとされ、完全に守られるためです。

血の問題を抱えていたあの女がいやされた時、イエスさまは力がご自分から出て行くのを感じました。この女性は信仰を堅く握っていたので、御力が流れ込むとすぐに女性のからだはいのちでいっぱいに満たされ、彼女の弱さは去りました。この御力が与えられると、あなたの必要なものはすべて満たされます。でも御力は、私たちの信仰がそれを受けるために動き出すまでは、流れてきません。信仰とは勝利です。もし信じるなら、それはあなたのものです。

私は長年、痔に苦しんできました。私のからだが虚弱体質だった頃です。血がいつも大量に出ていました。ある日私はもう我慢ならなくなって、オリーブ油の瓶をとって自分に油を注ぎました。私は主に言いました。「今すぐに、あなたがしたいと思われていることをして下さい。」まさにその瞬間にいやされました。神を信じる信仰を行動で表すことを神は願われています。信仰のようなものや、信仰に見えるものはありますが、神を信じる本物の信仰こそが目的に至らせます。

ザカリヤとマリヤの違いは何でしょうか。御使いがザカリヤのところに来て言いました。「あなたの妻エリサベツは男の子を産みます。」ザカリアは聖なる場所にいましたが、このメッセージを疑い始めました。「私ももう年寄りですし、妻ももう年をとっております。」ガブリエルは彼の不信仰を叱って、こう言いました。「これらのことが起こる日までは、あなたは、ものが言えず、話せなくなります。私のことばを信じなかったからです。」ですが、マリヤに御使いが現れた時と比べてみて下さい。マリヤは言いました。「ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。」そしてエリサベツはマリアにこう言ってあいさつをしました。「主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」神は同じような方法で私たちを神のことばをしっかりとつかむように導かれます。「主よ、あなたはこれを約束されました。今それをなさって下さい。」と大胆な信仰をもって宣言するようにと、神は私たちを導かれるのです。神ご自身がみことばを守られるという信仰を私たちが発揮する時に、神は喜ばれます。私たちはそういう者になれるでしょうか。

主は私たちをこの栄光と徳へとお召しになりました。そして、私たちの信仰が主をしっかりとつかんでいるなら、私たちはこの栄光と徳の現れを見ることになります。ある日、野外で集会をした時のことを思い出します。私の叔父が集会に来て言いました。「マリー叔母さんが死ぬ前にスミスに会いたがっているよ。」私は叔母に会いに行きました。叔母は確かに死にそうでした。私は言いました。「主よ、あなたは何かおできになりませんか。」私は手を伸ばして叔母の上に置きました。私がしたことはこれだけです。主の栄光と徳とがすぐに流れ込んだような感じがしました。マリー叔母さんは声を上げました。「御力がからだ中を巡っているわ！」その日に叔母は完全に良くなりました。

ある日、私が宣べ伝えていると、男性が包帯で巻かれた少年を連れて来ました。少年は鉄製の矯正器をはめていたので、歩けませんでした。人々が少年を講壇まで運ぶことも困難でした。彼らは六つほど座席をつなげて、その上で少年を引きずって来ました。私が両手を少年の上に置くと、主のいやしの力が現れてその子の中に入っていきました。その子どもは声を上げました。「お父さん、力がからだ中を巡っています！」彼らが少年の矯正器具と包帯を外すと、もうからだに何も悪いところはありませんでした。

主は私たちを、神のことばの書かれた歩く手紙となるようにして下さいます。イエスさまはみことばです。私たちのうちにおられる力です。そして、私たちのなかで、また私たちを通して働かれることが、主の願いであり、主ご自身の大きな喜びです。主が私たちの内側におられることを信じなくてはいけません。私たちが神にあって行動し、イエスの御名によって病人に手を置きながら、私たちの生けるキリストの素晴らしい力が現れると信じるなら、私たちには限りない未来の進歩があるのです。

みことばによる尊い素晴らしい約束は、私たちが神のご性質にあずかる者となるために私たちに与えられました。私たちがこれらのことを知っても、神のためにさらに大きなわざをしないので、聖霊が私たちのことで悲しんでおられると私は感じます。聖霊は私たちに扉を大きく開けて機会を差し出しておられませんか。神が私たちをさらにすぐれたことに導いて下さらないでしょうか。神が私たちをさらにすぐれた神の力の現れへと導かれることを信じませんか。私たちへの召しは、後ろもものを忘れ、ひたむきに前のものに向かって進み、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走ることなのです。